言葉の重み「津波てんでんこ」

津波てんでんこ」は、三陸地方の言い伝えで「津波が来たら、家族のことに構わず、各自てんでんばらばらに一人で高台へと逃げろ」という意味です。津波は到達速度が速いので家族に構っていると逃げ遅れて共倒れになってしまうため、「一族を存続させるためには、自分一人だけでもとにかく早く高台へ逃げろ」という意味に加えて、「自分の責任で自分の命を守れ」という意味もあるそうです。また、自分自身が助かって他の人を助けられなかったとしてもそれを非難しないという不文律もあるそうです。こちらにきて、いろいろな方から被災時のお話を拝聴し、その言葉の重みを学ばせていただきました。
先日、仕事帰りに米崎町脇ノ沢の自宅兼アトリエに四国中央市出身の版画家・加地保夫さんを訪ねました。加地さんは、スぺインから帰国後、約30年間、陸前高田市を拠点に制作活動を続けてこられたようです。今回のご縁は、私の地元の川之江ロータリークラブ陸前高田ロータリークラブに繋がったことにより、陸高RCが出版に協力した復刻版「高田松原ものがたり」のさし絵等を担当した加地さんが四国中央市の出身だという情報を得たことによるものです。
震災発生時、加地さんは、趣味で育てるリンゴの剪定を習うため高台のリンゴ園にいたそうです。この地に30年住む加地さんでも、「地震の後には津波!」という意識が低く、常識はずれの行動をし、アトリエのインクや絵具、プレス機のことが心配になって高台から下りて来たそうです。津波は自宅の目前に迫り、壮絶な光景を目の当たりにして、瀬戸内育ちの人間の愚かさを恥じたとのこと。アトリエは、地震でぐちゃぐちゃになってしまったそうですが、奥様共々ご無事で何よりでした。生かされた命を大切に、本業はもちろん、今取り組んでいる「絵を描くこと」を通じた認知症予防の仕事でも、被災したお年寄りをはじめ、陸前高田市のみなさんが元気になるために頑張って頂きたいと思います。
 大西賢治四国中央市)