住田基地と横田基地

 仕事が終わってから、足利市の栗原さんの運転で、宿舎のある陸前高田市矢作町の生出地区経由で、隣の住田町にあるボランティアの宿泊基地にお邪魔しました。この「住田基地」には、復幸応援センター関連でボランティアが来てくれた際に何度か山越えの県道を通って激励に出かけましたが、恐らく今回が私の任期中最後の訪問になるでしょう。
 住田基地は、震災後に住田町世田米の大股公民館をボランティアに解放して下さって誕生した無料宿泊施設で、住田町の社会福祉協議会が運営しています。今回は、新旧の公民館長さんやセンター長さん、そしてそれ以上に熱いボランティアの基地運営スタッフの皆さんから、基地開設の経緯や被災地を後方支援してきた地区住民の皆さんの思いなどについてお話を聞かせていただき、有意義な交流の場を与えていただきました。そこには、被災地の復興のために同じ方向をめざして全国から集まった様々な戦士たちのドラマと、たくさんの出会いがぎっしりと詰まっていることを、皆さんのお話から感じ取る事ができました。
 私の地元である四国中央市からは、私の陸前高田滞在中に全部で6組18人の職場の仲間がボランティアに来てくれました。どのグループも1200キロを超える道のりを自力走行でやってきて、ボランティアで汗を流して元気に帰って行きました。もちろん、住田基地にもお世話になっています。本当に頭の下がる思いです。
 今日、6組目として1人で来てくれた四国中央市ボランティア市民活動センターの鈴木さんが、夕方に復幸応援センターを再訪して下さり、3日間のボランティアを終えて充実した笑顔で帰って行かれました。私も、昨日は彼と一緒に農地の草刈りに行かせてもらったのですが、今日は本当に爽やかな笑顔をしていました。

 陸前高田市社会福祉協議会が設置し、全国の様々な団体の支援を受けて運営している「陸前高田市災害ボランティアセンター」は、陸前高田市の横田町にあり、通称「横田基地」と呼ばれています。毎日全国から押し寄せるボランティアを受け入れてニーズとのマッチングを行い、活動を支援してくれる重要な基地です。ここにも多くの出会いから生まれる絆とドラマが溢れています。
 住田基地と横田基地は、陸前高田市の復興を支えている「車の両輪」です。どちらが欠けても漸く転がり始めた復興の荷車が止まってしまいます。気仙地方をはじめ、この東北地方に厳然と残る「結いっこ」と呼ばれる共助の精神がこのモデル的な枠組みを自然と生み出したのだと思います。とりあえずは、これから訪れる冬将軍の手ごわさを意識して、12月25日までの基地継続を決定し、その後の対応を今後の検討事項として残しているようですが、被災地の復興への道のりを考えると、何か妙案が無いものかと皆が同じ悩みを持っています。
 とはいえ、隣町の住田基地にいつまでも頼ってばかりはいられないでしょう。陸前高田にボランティアはまだまだ必要ですが、次の段階としては、住田基地に変わる新たな機能を陸前高田自身が備え、引き続き全国の熱いエネルギーを迎え入れていくことが必要でしょう。
 官民の力を結集し、次のステップに進む陸前高田を、復幸応援センターとしても何とかお手伝いできないものかと思いながら宿舎に戻った山越えの道では、合わせて9頭の鹿たちに出会う事ができました。
 大西賢治四国中央市