復幸へのプレーボール

 10月6日付けのブログで足利市の金坂さんがふれましたが、ここ陸前高田市には、全日本クラブ野球選手権に4度出場している社会人硬式野球クラブチーム『高田クラブ』があります。
 残念ながら、東日本大震災により今シーズンは休部となっています。チームメイトを津波で失っただけでなく、活動の拠点としていた高田松原球場も失いました。
 
 こうした中、岩手県奥州市にある『オール江刺』というクラブチーム(全国大会3回出場)から、被災して大好きな野球ができなくなっている高田クラブに「一緒に練習しませんか」というお誘いがあり、高田クラブからは山本監督を含め6人が参加しました。他にも参加したい選手たちがいたようですが、日頃から地元の消防団で活躍している選手たちも多く、同日、消防団の慰霊祭が行われることもあって、この人数でも仕方ないとのことでした。改めて、チームがいかに地域に根差しているのかをうかがい知ることができます。

 23日(日)朝7時に陸前高田市役所仮庁舎を2台に分かれて出発し、1時間半ほど離れた江刺中央運動公園野球場に向かいました。前日から降り続いた雨も止み、半袖で過ごせるほどの温かな野球日和の中、ウオーミングアップ〜キャッチボール〜トスバッティング〜シートノックとひと通りの流れのあと、ゴチャ混ぜの交流紅白戦が行われました。
 

【オール江刺・澤口監督(左)と高田クラブ・山本監督】

 小学校2年生の時から野球一筋に生きてきた私は、ただ試合を見ていても同じように時間が過ぎてしまうと思い、空いているキャッチャー道具を借りて、自ら志願して即席のプレートアンパイヤー(球審)を務めさせていただきました。「抗議は一切なしでお願いします!」「では、プレーボール!」と寒〜い笑い?をいただきながらスタートした試合も、和気あいあいとした雰囲気の中で進み、先攻のAチームが5−1で勝利しました。高田クラブの選手たちは、もちろん今シーズン初めて硬式ボールを握ったのです。にもかかわらず、守備機会も難なくこなし、何と打席ではヒットを放つ選手もいました。キャッチャーのすぐ後ろからマスク越しに試合を見ていた私は、何より、彼らがうれしそうに野球をしていたことに感激しました。それと同時に、以前と変わらずに活動できているチーム(オール江刺)が、震災により活動休止を余儀なくされているチームに声を掛け、一緒に交流を図りながら野球の楽しみを分かち合うといった心意気!こちらにも感激しました。

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【高田クラブから参加した6人】

 山本監督によると、今は、今後どうやってチーム活動を再開していったらいいのかを模索しているところで、場合によっては、同じように休部している沿岸部のチームで合同チームを作る、または活動ができる他のチームに選手を移籍させる、などと悩みは尽きないようです。また、選手は何とか確保できたとしても、野球場がなく、高台の学校の校庭には仮設住宅が立ち並ぶ陸前高田市内では、活動したくても場がないのです。

 当然ですが、まずは最低限の生活の再建です。でも、さらにもう一歩歩み出すためにも、野球に限らず、こうした趣味や娯楽の分野の再建も忘れてはならないことだと思います。

 金坂さんに代わって、このたび『陸前高田市復幸応援センター』に着任しました足利市栗原祐幸と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

栗原祐幸(足利市)