木材を使って…

 このまちには今でも多くのガレキが山積みとなっています。でもその中には、まだ使えるものがあります。それは木材です。
  
 この木材などを使用して、グラウンド整備用のトンボ(レーキ)を作ったらどうかと考えました。トンボは、野球だけでなくグラウンドを使う競技においては無くてはならないものですが、中には、グラウンドの端っこで雨ざらしになってポツンと立っているものもあります。決して新しい樹木を伐採してまで作らなくてもいいのではないでしょうか。
 
 ここには、何百年もの間市民に親しまれ、生き抜いてきた70,000本もの美しい高田松原がありました。でも、あの大津波によって、奇跡的に残った1本を除きすべてなぎ倒され流されました。さらには、山際を見渡すと津波が到達して塩を被ったため立ち枯れしている杉の木もたくさんあります。

 

 
 被災地で復興への足かせの一つとなっているガレキの山は、受け入れ先自治体も現時点ではごく限られ、いずれどこかの自治体で埋められるか焼却されることでしょう。実際にこれまでガレキの中から探し出された木の幹は、職人さんらによって、ゴミになることなく、魂のこもった仏像や看板、寺院のお札などに生まれ変わっています。今後はそんな木材がトンボにも生まれ変わることで貴重な資源を有効活用できるひとつのサイクルが構築されることを期待します。
 製造・輸送コスト削減と指導的観点から、3つのパーツからなるトンボを成形せずに発送し、受け取った部員たちなどが自らネジを打ち、そこで初めて形になる。自分たちで作ったモノですから、思い入れもひとしおかと思います。まずは野球に関わる皆さんを手始めに、1人でも多くの方にこの輪が広がってもらえるとうれしいです。
 
 
 振り返るとあっという間の3週間でした。陸前高田で出会ったすべての皆さんに心から感謝申し上げます。
 あの大津波で、これまで当たり前のようにそこにあった大切な生命、暮らし、思い出などあるゆるものを一瞬にして失ったにもかかわらず、みんな前を向いて必死に頑張っている姿に、応援に来たはずの自分が逆に勇気をいただきました。
 
 この街は必ず復活します。これから来る厳しい東北の冬に耐え、春に花を咲かせるであろう桜の木ように、この街にはいつか必ず本当の笑顔が戻ると信じて、明朝この地を後にします。
 
 がんばっぺし! 陸前高田
  
 ありがとう! 陸前高田
 
 また来ます。
 
栗原祐幸足利市