お世話になりました‐人生で一番暑い夏

7月31日に陸前高田市に参ってから、早や1ヶ月が経ちました。本日にて、私の派遣期間が終了いたします。

こちらに来てからというもの、ずっと30℃を超える暑さが続き、網走市民としてはかなりつらい状況が続いていました。

しかし、前半は「うごく七夕祭り」、その後は竹とんぼの無料配布と天文観測会「星空を見よう!」開催と、暑さを忘れて尽力させていただきました。これらの活動の際にお世話になった方々、本当にありがとうございました。


・・・ここまでは、本ブログにてご紹介していた業務です。

実は私は、岩手大学出身でこちらは2度目の滞在です。また、網走市では市の博物館に勤務している学芸員です。自然系を主に担当しており、こちらへ派遣が決まった際は、陸前高田市の博物館の被災と被災後の状況、復旧作業のお手伝いなどを主たる目的と考えていました。

しかし、資料の洗浄・修繕を行っている生出小学校に伺ってみたところ、1ヶ月だけの派遣職員がお手伝いすると、かえって作業効率が落ちてしまう恐れを感じました。

仕事を失った気持ちで館長とお話してみると、現状の自然を調査したいが手が回らないというお話でした。その後、資料の大部分を一時保管している岩手県立博物館に伺って担当学芸員とお話したところ、1ヶ月に一度だけの植物調査にとどまり、調査量が不足しているというお話でした。


 
岩手県立博物館収蔵庫で保管されている植物標本(上:薫蒸のために箱が開かれています)と貝標本(下)


これで私の通常業務は決定しました。被災後1年半経った陸前高田市の自然の現状を後世に残すため、岩手県立博物館と陸前高田市博物館双方に標本つくりと情報収集を申し出、快諾いただきました。岩手県立博物館の担当学芸員鈴木まほろ氏には、植物標本作成のための乾燥シートのレンタルまでしていただきました。


その後、私の被災地めぐりが始まり、海岸に漂着している貝類を中心に、被災地での標本つくりを行っておりました。作成した標本は岩手県立博物館と相談の上、一時岩手県立博物館にて保管いただくこととし、陸前高田市博物館長にその旨を伝えました。標本は機を見て陸前高田市へ受け渡される予定です。

8月30日に岩手県立博物館に標本をお届けしましたが、貝は69種700個、植物は43種の成果です。今後、博物館が復幸する際にお役立ていただければ、とてもうれしいです。

 
標本となった貝(上)と植物(下)


標本をとりながら被災地をめぐったことにより、様々な異変を感じ取りました。そのつど、やはりまだ影響は残っていると実感し、今後、私見という形でまとめ、岩手県立博物館に提出する予定です。


中でも印象に残った景色がこちらになります。


被災した水田跡地で咲くミズアオイ絶滅危惧種


市街地にあった水田跡地で、このお花畑に出会い、一瞬見惚れました。しかし、よくよく考えてみると、これは明らかにおかしな景観です。市街地に湿地の景色ができているのです。

後ろにはガマの大群落。市街地に、公園でも無いのにこの景色。悲しいお花畑でした。


また、全国どこにでもあるセイヨウタンポポが見当たりません。おそらく、根の深い植物は塩に影響を受けやすく、まだ生育できないのでしょう。


市街地であった場所にある水溜りや水田跡地では、ボラの稚魚が大量に泳いでいる姿。沿岸部の漁港にある雨水排水用の側溝には、地盤沈下により海水が逆流し、イソガニや小魚、岩場の貝類の住処となっていました。


側溝に住み着いたイソガニ、ケフサイソガニ、小魚


今後も復興に向けた取り組みは続き、終わりはいつになるか想像もできません。10年後、20年後、震災後の自然環境を振り返ってみる必要があったときに、私の今回の活動が少しでもそのお役に立てることを願い、この地を去ろうと思います。


宿舎がある生出地区の皆様、暖かく見守り、時には除草までしていただいてありがとうございました。
うごく七夕実行委員会の皆様、色々とお気遣いをいただき、ありがとうございました。
竹とんぼを受け入れてくださった市内の保育所・保育園の皆様、ありがとうございました。
「星空を見よう!」に参加いただいた米崎中学校仮設住宅自治会の皆様、ご参加ありがとうございました。


お隣の事務所で働く観光物産協会の皆様、鍵の保管等、様々な形でお世話になりました。
協働センター勤務の皆様、様々な形で情報提供いただき、お世話になりました。
AID TAKATAの皆様、当市での私の学芸活動にご理解いただき、背中を押してくださってありがとうございました。


そして、矢作小学校の黄川田校長、佐藤教諭、温かいおもてなしを終始していただき、本当にありがとうございました。最終日には授業も拝見でき、久しぶりに小学生にもどった気分でした。今後の陸前高田市の未来を担うお仕事に敬意を覚えずにはいれません。


ともに過ごした百合さん(八幡幡市)、石本さん(宇土市)、伊藤さん(宇土市)、川合さん(松阪市)、橋本さん(水戸市)、山本さん(玉野市)、思い出深い時間をありがとうございました。


最後に、宿舎で一つ屋根の下で1ヶ月過ごした桑原さん(関市)、お互い暑い夏を過ごした事を忘れずにいましょう。宿舎を研究室のようにしてしまって申し訳ありませんでした。


ついつい、長文になってしまいました。
陸前高田市の皆様、一ヶ月間大変お世話になりました。こちらで見聞きしたことは、今後、地元に帰ってからもお伝えしていくつもりです。この経験を忘れずに、皆様のことを忘れずに、遠く網走の地より応援させていただきます。


三品 聡(網走市